レポート
2024.09.27

持続可能な漁業のために 姫路市 坊勢島(ぼうぜじま) 産直協定締結

2024年9月21日(土)、パルシステム連合会(生協の宅配サービス。環境保全など、持続可能な社会をめざす取り組みも行う)と、坊勢漁業協同組合(兵庫県姫路市家島町)、兵庫県漁業協同組合連合会(兵庫県明石市中崎)、全国漁業協同組合連合会が、4者による産直提携事業に関する協定書を締結しました。水産品の取引や漁業体験など利用者との交流を通じて、地域の持続可能な水産業を目指します。

坊勢漁協 竹中代表理事は、「近年の海の環境変化に伴い、底びき網や磯端の漁業が特に厳しくなっています。産直提携は、坊勢漁協にひとすじの光が見えた思いです。これからの浜の推進力となることを期待したい」とあいさつし、豊かな海づくりと水産業継続に向けた連携への期待を語りました。

パルシステム連合会 渋澤専務理事は、「小さな魚ばかりが獲れるなどの資源状況を目の当たりにしました。パルシステムは2009年、水産方針を策定し、海の環境保全のため水産業・漁業者と連携し『水産の産直』を進めてきました。水産資源減少の危機的状況を乗り越えていくため、協同組合間連携の力を発揮したい」とあいさつし、消費の力で地域づくりの一助を担うことへの抱負を述べました。

パルシステムでは現在、坊勢島から北東に20㎞の兵庫県漁連水産加工センター(姫路市白浜町)で加工される「兵庫県産いかなごくぎ煮」などを供給しています。今後は坊勢漁協で水揚げされた魚介類限定の商品開発なども視野に入れ、取引の拡大を予定します。産直提携の条件の1つである利用者と生産者の交流にも力を入れ、坊勢漁協の豊かな海づくりを目指す漁業への理解も深めていくとのことです。

坊勢島の“つくり育てる漁業”

瀬戸内海の家島諸島(いえしましょとう)の1つである坊勢島は、人口の約7割が漁業に携わる水産業の島です。保有する漁船数は827隻で、単一漁港当たりの船籍数は日本一を誇ります。坊勢漁協では年間を通し80種以上の豊富な魚介の水揚げがあり、漁獲高も県内トップクラスです。

豊かな海に暮らしを支えられている坊勢漁協の人びとは、資源管理型の持続可能な水産業を重視します。最大で幅100メートル高さ25メートルの人工魚礁(ぎょしょう)を海中に多数設置し藻場(もば)を作り、産卵場所として稚魚の成育を促しています。中間育成施設も設けてヒラメやカレイの稚魚を育て放流し、牡蠣や海苔などの養殖も盛んです。近海で漁獲したサバは、海上生簀(いけす)で約40㎝前後に成長させ「ぼうぜ鯖」としてブランド化するなど、”つくり育てる漁業”に力を入れています。

これらの豊かな海をつくる漁業のようすは、見学船「第八ふじなみ」から間近に観察でき、稚魚の放流やサバの餌やりなどの漁業体験も可能です。水揚げされた魚介類は姫路港のJFぼうぜ姫路まえどれ市場で味わえ、現地を訪ねれば、坊勢漁協の豊かさを体感できます。

一方で、豊かな漁場を有する坊勢漁協も国内水産業の動向に違わず、漁業者の高齢化や原油価格高騰による操業影響などの課題を抱えています。気候変動や海水温上昇による漁獲量減少も心配され、将来にわたる漁業の継続のため対策が必要です。今回の産直提携により、水産品の取引をはじめ利用者が産地を訪れ地域への理解を深めることで、坊勢漁協の発展を後押ししていくとのことです。

坊勢島での漁業見学&体験ツアーの詳細はこちら:坊勢漁業協同組合HP

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